配当金二重課税についての覚え書き
企業から株主に支払われる配当金は、企業が法人税を支払ったあとの税引き後純利益を原資としますが、個人株主は、配当金を受け取る段階で課税されるため、結果的には二重に課税されることになります。これを配当の二重課税と呼んでいます。
株式投資信託においても、ファンドが受け取る配当金の段階では課税されませんが、受益者が収益分配金を受け取る段階で課税されるため、結果的には二重課税となっています。
こうした二重課税の軽減・撤廃措置は従来から世界各国でも課題とされています。二重課税問題を解決すれば、投資家にとって税引き後の手取り配当金額が増えるので結果的に投資促進効果が期待できます。
配当金控除
配当控除とは、国内株式等の配当等について、総合課税分として確定申告をした場合に適用される税額控除です。
例えば、国内株式の配当は、通常、法人税が課された後の利益を株主に分配するものですが、ここにさらに所得税が課されると二重課税になってしまいます。
これを排除する意味で、税額控除として設けられたものが配当控除です。
配当控除率は課税総所得(申告分離課税分の所得を含みますが、山林所得・退職所得は除きます)の金額により異なり、所得税 については配当所得の10%又は5%(住民税については配当所得の2.8%又は1.4%)が算出税額から差し引かれます。
なお、一定の公募国内株式投資信 託の収益分配金についても配当控除の適用がありますが、配当控除率は最高でも国内株式の配当金の半分となります。
法人擬制説と法人実在説
会社が所得を得たら法人税等を負担するが、この会社の所得とは一体誰のものなのだろうか。会社自体は利益追求のために人が集まって作った団体であるから、結局は会社に出資した人たちのものなのだろうか。もし、そうであるならば、結局は、配当として個人に渡るのであるから、所得税で課税すればよく、法人税は不要かもしれない。
あるいは、少なくとも個人が配当として受け取った所得はすでに法人税を負担しているので、法人と所得税の二重課税を調整すべきだということになる。
このように会社の所得は所詮個人株主の所得なのだ、と考えるのを税法では法人擬制説と呼ぶ。法人というのは仮の姿で、法人の所得は最終的に個人の所得になる、というわけである。
この立場に立てば、法人税というのは所得税の前取りにすぎず、株主配当所得のところで法人税分を調整しなければならない。(中略)
これに対して、会社というのは個人株主からも離れた独自の存在であって、会社の所得はやはり会社自体の所得と考えるべきだという法人実在説もある。
この立場に立てば、二重課税調整など不要で、会社の場合も個人と同様に会社の所得に応じた超過累進税率を適用したほうが公平である、ということになる。
~日本の税金 新版 著:三木義一
配当金の課税については以下のリンクがわかりやすい
No.1331 上場株式等の配当所得に係る申告分離課税制度|所得税|国税庁
要は、まず確定申告するかしないかを選択。確定申告しないのであれば、確定申告不要制度が適用される。
確定申告するのであれば、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択することになる。税率の適用は表にある通り。
日本の場合は、法人擬制説に立って課税制度を設けている。
それにしても、税制の話は難しい。
高齢化はデフレを起こすというデタラメ
高齢化はインフレ圧力強める公算-前日銀総裁らの見方に異議 - Bloomberg
ミカエル・ジュセリウス、エロッド・タカッツ両氏は、若年層と高齢者層が生産より消費を多くすることでインフレ圧力を高めると指摘。人口においてより大きな割合を占める労働年齢の人々はその反対で、物価圧力を弱めるという。先進22カ国の1955-2010年のデータを基に研究論文をまとめた。
両氏は「われわれの研究結果は高齢化が最終的にインフレ圧力を小さくするのではなく、高める可能性を示唆しており、支配的な見方と逆だ」と説明。「インフレ圧力が最も大きいのは高齢化が最も急速に進むと見込まれる国々になるだろう。ギリシャやイタリア、韓国、スペインは5ポイント以上のインフレ率上昇に見舞われる可能性がある」とコメントした。
これに少子化が加わると少子高齢化だが、少子高齢化とは少子化によって労働人口が相対的に減り、高齢化により労動をせずに消費のみする人口が、相対的に増えるということである。
相対的に数が多い高齢者の消費需要を満たす供給力、労働者が不足してくるのだから、人手不足となり、賃金は上昇する。したがって、インフレとなる。
ただ日本の場合、そうことは単純に上手くいかない。
なぜ人手不足にも関わらず、賃金が上がらないのか
人手不足にもかかわらず、賃金の上昇率が鈍いことの要因の1つは、非正規雇用の増加にある。
総務省の労働力調査によると、14年11月の雇用者数(役員を除く)は5294万人で、うち非正規は前年同月比48万人増の2012万人と増えた一方、正社員は同29万人減の3281万人に減少。全労働者に占める非正規の割合は38・0%に達し、30日に発表する暦年ベースでも過去最高となる見通しだ。
人手不足を非正規雇用で補っているため、賃金が上昇しない。
また、有効求人倍率は平成27年度の1月時点で、1.14だがその内容を見るとパートタイムは1.33、正社員は季節調整値で0.70である。全体として日本で不足しているのは、低賃金労働者なのである。*1
もう1つは、消費増税による景気の失速。景気が失速しているにもかかわらず、企業が労動者の賃金を上げようとはならない。
安部総理は、実質賃金を上げるという趣旨の発言をしているが、2017年に消費税を10%に上げるという発言から、根本的に何が原因で実質賃金が抑制されているのか理解しておらず、ブレーンの竹中に至っては「正社員を無くそう」などと訳の分からないことを言っている始末。
だめだこりゃ。
参考資料
ぼくらがメディアをつぶすわけ 少子高齢化でデフレになるというウソ
「人手不足」でも"給与の上昇率"が低いのはなぜ? | マイナビニュース
一般職業紹介状況(平成27年1月分)について |報道発表資料|厚生労働省
物価上昇で「実質賃金」15か月連続減少 首相は経済界に「賃上げ」再要請 | キャリコネニュース
レジーム・チェンジ―恐慌を突破する逆転の発想 (NHK出版新書 373): 中野 剛志: 本
*1:www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11602000-Shokugyouanteikyoku-Koyouseisakuka/0000032973_2_1_1_3_1_6.pdf#page=3
あまりにも的が外れたピケティ批判
ピケティさんの教え、日本への処方箋に違和感(核心) :日本経済新聞
まあ、ちょっとした訓練にはなるので、間違い探しを。
「ひどい状態にある財政を再建しながら格差を縮める難しさがある。」
OECDの調査によると、格差を是正すると経済は成長する。*1 低所得者層を減らし中間層を増やせば、経済成長するし、当然、税収も増える。
出典:トマ・ピケティ『21世紀の資本』は貧困増大と暴力的な格差の土台築くアベノミクスに警鐘を鳴らしている(井上伸) - 個人 - Yahoo!ニュース
どう考えても、高所得者の税率を増やしたほうが良いと思いますが。
財政難の折に進んで公務員の賃上げをという意見には戸惑う。
公務員に関しては、確かに所得は高いが、人口あたりの数は少ない*2。災害国の日本において、有事の際、行政機能に支障をきたしてはいけないので、所得を抑制しつつ数を増やすというのであれば、賛成だが、ただ歳出を減らすためだけに公務員の所得を抑制するのは、経済にとって良くない影響が出るだろう。
ピケティは、日本の財政難について、次のように述べている。
歳出だけを削減して、債務返済をする。その際に成長もインフレ率も非常に低いままということになりますと、50年、100年というような影響が出てくるということなので、本の中にも書きましたけれども、唯一挙げられるのは、19世紀の英国の例です。
まるまる一世紀掛かって、ようやく公的債務を返済しました。そのかなりの金額を国内の金利生活者に対する利払いに使ってしまって、教育に回すお金をどんどん減らしてきたということなので、日本にとっても、ユーロ圏にとっても、これはあまりいい解決法とは考えられません。
歴史を見て、今までの公的債務危機と呼ばれているものを、どういう風に対応してきたのかというのを学ぶことで、一番いいやり方というのを模索するのが重要だと思います。GDPの200%という公的債務水準になったのは、日本が初めてではありません。1945年のドイツやフランスでも、それぐらいありました。200%。しかし、これは今言ったとおり、債務のリストラクチャリングとインフレ誘導によって、あっという間に解消したわけです。
やはり成長に投資をし、教育に投資をし、次世代に投資をすることによって、公的債務を急激に減らしていく方法がいいと思います。
重い資産課税ともなれば資本は海外に逃げる。
だから
富裕層の株「含み益」に課税、海外移住での税逃れ防止=政府税調 | Reuters
こういう話や
資産家は要注意 「海外に5000万円」なら申告義務 :Money&Investment :コラム :マネー :日本経済新聞
こういうことをやってる。
所得の底上げにつながる政策も急ぐべき
それに反対はしないが、公務員の給料を下げると所得は底下げされますが、大丈夫ですか?(笑)