市場原理に基づいて公共調達を行うのは正しいのか

藤井聡「「談合」は、悪なのか?」(土木を語る 第7回) - YouTubeを箇条書きで文字起こし

 

公共調達の歴史


・公共調達は、明治から始まった
・最初は、技術者がほとんどおらず、純然たる公務員事業として行われていた
・その後、東大、京大で土木工学科を作りそこで技術者を育成し、数を増やしていく
・その結果、民間企業ができてくる。ただし、数が少ないので随意契約

・その後、会計法ができる。これができてから見積もりを作って最も安い業者を選ぶ方 式に変更
・この会計法が、未だに残っている
・この会計法における一般競争入札において、必ず起こる問題がある。それがダンピン グである
ダンピングとは、仕事欲しさに不当に安い価格で事業を請負うこと

・これにより、粗悪な公共事業が行われ滅茶苦茶になっていく
・ここで、会計法を改正すれば良かったのだが、天皇陛下直々の勅令を出す
・当時の勅令は、法律と同等に重たいもの
勅令の内容は、指名競争入札にしなさいというもの

指名競争入札とは、政府が信頼できる業者を選定し、その中で競争に付して契約者を 決める方式
・基本的には、会計法に記載された一般競争入札だが、工事の粗悪化が危惧される場  合、指名競争入札を選択することが出来る

・そこからしばらくしてまた別の勅令が下る。その内容は、最低価格制度。
指名競争入札においても、仕事欲しさに安値受注が出てくる
・従って、あまりにも安い見積もりに関してはアウトという勅令を出した

・これでしばらく上手く行っていたが、今度は談合という問題が起きてくる
・談合の内容は、企業同士で価格を調整し、事業を順番に回す
・しかし、談合によってその内価格がどんどん釣り上がって行く
・ただし、上限価格を設定することによって、ある程度その問題はクリアできた

・その後、談合破りの問題が発生
・談合破りとは、事業者同士が結託して、特定の事業者に仕事を回さないようにするこ と
・この結果、談合破りが行われないようにするため、談合屋が登場
・しかし、談合屋の権利が強くなって、建設業者の取り分が減り、粗悪事業が増えてし まう

・そこで、建設業の組合ができる
・談合破りをしたら、組合から排除、指名から除外というペナルティを儲ける
・組合自体も政府が査察などをし、監視する
・これにより、1940年代に建設業における、公共調達制度は完成を見る

・しかし、敗戦によりこの制度は全て解体
・アメリカで行われている一般競争入札が導入される

・戦後においては、政治家が談合屋となる
・談合には、良い談合と悪い談合がある

・建設業者同士で仕事を回す理由は、災害時の供給不足を防ぐため
・これだけであれば、良い談合なのだが、値段を釣り上げたり、談合屋に過剰な資金が 流れてしまうのは悪い談合

・戦後においても、悪い談合は無くして良い談合を残す議論が行われる
・戦後国会でこれが問題となり、1984年に政府がガイドラインを作る
ガイドラインは是認される談合と、禁止される談合を分ける

・ところが1990年頃から、日米構造協議によって状況が変わってくる
独占禁止法をもっと強くしろというアメリカの圧力が掛かる
・それにより、また一般競争入札制度に近い形に戻される
・その結果、粗悪事業が増え、ダンピング姉歯による耐震偽装問題などが発生

・また、現在建設事業のマーケットサイズはピーク時の半分前後になっているが、スー パー ゼネコンと呼ばれる大手五社は横ばいないし利益を拡張している

・つまり、一般競争入札は、強者に有利な制度なため、大手が仕事の多くを奪っていっ た
・これにより、弱小の建設業は次々に倒れていったため、強靭化や震災復興などで供給 不足が発生
・供給不足の要因は、公共事業を減らしたというのもあるが、制度が崩壊したというの もある

現在の問題に対応するには


・1940年代の仕組みや1984年に作られたガイドラインなどに沿ってもう一度、まとも な公共調達制度を再構築すべき
・この議論はごく一部で行われ、その努力が結実したのが先日の品確法の改定
・品確法には、公共調達たるものダンピングを起こしてはならない、必要最低限の建設 供給力を担保しなければならない、技術力を担保しなければならない
・かつての機能を公共調達制度は持つべきだという「べき論」が書かれている
・そのために必要な公共調達制度はこれからあるいは今現在議論している

・これからの制度設計において、日本人に合うような、日本の社会に合うような、公共 調達制度とは何なのかということを歴史から学ぶべき