人が死なない防災

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Amazon.co.jp: 人が死なない防災 (集英社新書): 片田 敏孝: 本

 

 

この本の内容を一言で言えば、地球温暖化などの影響で、台風の巨大化、ゲリラ豪雨、短時間に1000ミリを超える雨量など災害が深刻化した結果、行政頼りの防災に限界がきているということだ。

例えば、広島の土砂災害では、どこで豪雨が降り、どこで土砂災害が起こるかなど全く予測ができなかった。そもそも土砂災害の予測は現代の技術を持ってしても困難である。また、よしんば避難勧告を素早く出したとしても、例えば水難事故においては、逃げたほうが良いケース、逃げないほうが良いケースが存在しており、行政は個別具体にそれを区別することができない。

このような行政の限界という1つの結論に達した時、これからの防災はどうあるべきか、災害にどう対処していくべきか、が示されているのが本書である。

その1つの実例が「釜石の奇跡」だろう。本書には釜石の子供たちがどうやって自発的な避難を行うに至ったか、詳細に記されている。

また本書では災害対策基本法によって、100年に1回起きるか起きないかの災害に備え、堤防や防波堤、砂防ダムなど各種公共事業による災害対策で、被害が年間1000人前後から100人前後に減ったことが記載されており、行政による公助を否定してはいない。ただし、災害発生が減ったことにより、逃げないことが常態化してしまうなど、想定にとらわれすぎた、災害意識が低い非自発的な住民そのものを問題視する。

以下は私見だが、これからの防災は、行政による公助だけでなく自助・共助というものも加え、住民自治ならぬ住民防災を、各地域で暮らすための作法として身に付ける必要がある。この自助・共助・公助の三位一体型の防災こそが、激化した災害に対抗し得る手段ではないだろうか。