経済政策で人は死ぬか?
出典:経済政策で人が死ぬか? デヴィッド・スタックラー他著 : なんでも好奇心
この点で、リーマン・ショックで大きな影響を受けたアイスランドとギリシャの対比は劇的だ。両国とも危機に陥り、IMFに支援を求めたが、アイスランドは国民投票で、投資に失敗した銀行の債務を納税者に尻拭いさせる提案を拒否、銀行を破綻(はたん)するに任せ、医療等の社会保護支出をむしろ増加させた。この結果、アイスランド経済は急速に回復、IMFへの返済も始まった。ところがギリシャは、IMFの処方箋(せん)をそのまま受け入れて医療費など財政支出を大幅に削減、結果として国民健康の大規模な悪化を招き、肝心の経済も、GDPが約4分の3に縮小、失業率も27%と記録的水準に達した。
もはや、両政策の優劣は明らかであろう。経済危機下の財政緊縮は、かえって事態を悪化させる。危機下でも社会保護支出を怠らないことが経済回復への近道だ。「人的資本投資」は、割に合うのだ。
一方、その頃安倍政権では社会保障費など国債発行圧縮を決めたのであった。
不況時に緊縮財政をすればさらなる不況を招く。実際、世界恐慌時、財政均衡路線を取ったフーバー政権では、1933年の名目GDPが1919年から45%減少し、1200万人に達する失業者を生み出し、失業率は25%に達した。*1
GDPが二期連続で落ち、景気後退になってる今、やるべきは緊縮財政ではなく積極財政なのだ。
Amazon.co.jp: 経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策: デヴィッド スタックラー, サンジェイ バス, 橘 明美, 臼井 美子: 本