円安で海外の生産を国内に移す動き・・・?

私が経営者で、自分の企業さえ儲かれば良いという前提で行動しているのであれば、絶対に国内に生産拠点を戻さない。その理由は2つ。

第一にこの円安は中長期的には持続可能ではない。今回の円安は政府の金融緩和によって人為的にもたらされたもの。しかし、円安によるコストプッシュインフレが問題視されており、安部総理も円安対策の指示を出した。つまり、金融緩和をこれ以上ふかし続けるのは不可能である。また、現在の変動相場制は、世界の経済情勢が不安定なこともあり、いつ何が起きて急激に円高に振れるかわからないのも経営者にとっては問題だ。

第二に国内の需要が乏しい。消費増税の政策の失敗により2期連続でGDPが後退。加えて消費増税の影響は、3年殺しと言われており、97年の時同様、少なくとも数年は、消費に深刻な影響をもたらす。需要の乏しい国で利益は出せない。これは、別に私だけが思っていることではない。内閣府が行った企業行動に関するアンケート調査によると、生産拠点を海外に置く理由は「現地やその周辺の需要が旺盛」が50.8%とトップである。*1

国内の需要にある程度見通しが立てば、年々低下してはいるものの、一人あたりのGDPが比較的高く、GDPの規模が大きい日本というマーケットは魅力的ではある。しかし、肝心要の政府が需要を増やす政策ではなく、消費税10%増税など、需要を抑制ないし減退させる政策を取る見通しなので、経営者は、とてもではないが生産拠点を国内に戻す気になどなれないだろうし、そうした判断は賢明と言えるだろう。