トマ・ピケティの最低賃金制度に関する発言
<トマ・ピケティ講義>パリ白熱教室 第3回「不平等と教育格差」~ なぜ所得格差は生まれるのか~ - YouTube
・ピケティは、有名なデイヴィッド・カードとアラン・クルーガーの実証研究を引用し、この研究により、ある程度の水準の最低賃金や、ある程度の固定的な給与体系が有効であることが示されたと述べている
ニュージャージー州で最低賃金が引き上げられた際に, ファーストフード店の雇用量の変化を, 最低賃金が引き上げられなかった隣のペンシルヴァニア州と比較した研究。 それまでの経済学者の常識とは逆に, 最低賃金が引き上げられたニュージャージー州のファーストフード店の雇用が少し増えたという結果が報告されました。
出典:www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/04/pdf/002-011.pdf#page=4
・ピケティは、各国の最低賃金の歴史を振り返った時、特にアメリカが興味深いと述べている
出典:図 9.1 フランスとアメリカの最低賃金 1950-2013
・上図は、購買力平価で、1ユーロ1.2ドルで換算しての比較である
・両国の最低賃金の推移を比較して驚くことは、1950年代、1960年代はフランスのほうが最低賃金が低かったことだ
・なぜこのように変化したのか
・フランスに関しては、法律上の義務から、物価が上昇する度に最低賃金が引き上げられた
・対してアメリカは1980年代のレーガン政権時代に、レーガノミクスのもとで最低賃金は抑えられ、インフレにより実質的に低下し続けた
・現在のアメリカの最低賃金の実質的な購買力は、1960年代の水準をも下回っており、半世紀近くの間、最低賃金は実質的に低下し続けていた
・所得上位層がますます豊かになっているだけでなく、所得下位層が沈み込んだ
・だからといって最低賃金を3倍にせよと言っているのではなく、そんなことをすれば、失業が増えるだろう
・しかし、アメリカの最低賃金について、現在の7.2ドルから9~10ドルに引き上げても失業が増えることもないだろう
・アメリカについて、所得下位50%が高い技能の職業に従事し、高い賃金で働けるように教育に投資し、最低賃金の引き上げと教育や職業訓練を同時に推し進める政策が必要だと述べている
・フランスの場合は、状況が異なり、最低賃金は社会保障税と考え合わせると、フランス経済の生産性から見て、アメリカよりかなり高い
・したがって、フランスでは最低賃金を引き上げるか否かの答えも変わってくる
・フランスの場合、最低賃金を引き上げるべきとは必ずしも言えない状況にある
・また、近年、ヨーロッパで最低賃金制度が議論・導入されるようになった理由として、今まで労働組合が担ってきた役割を最低賃金制度が代替するようになったかもしれない
・特にサービス業では労動者の組織力が弱いため、全国的な最低賃金制度の役割が求められる
・最低賃金制度には、適切な水準がどこにあるのかという問題があり、それについては、上記で述べてきたように、税制や教育システムによって異なる