今更TPP

アメリカとの交渉で日本が勝てない理由

TPPが日本にとって有益なものになるかどうかは交渉次第である。
したがって、問題は交渉が日本にとって優位に運べる状況にあるかどうかで、TPPにおいてその主な相手国はアメリカ。

戦後のアメリカと日本の貿易交渉史を振り返ると、日米綿製品協定における対米綿製品の輸出自主規制、沖縄返還にける繊維業の輸出規制、プラザ合意、日米構造協議、年次改革要望書などなど、日本が有利に立ったことなどロクになく、ことごとくアメリカにやられてしまっている。

よしんば日本が有利なルールを作ったとしてもだ、日本にとって有利なルールを築くということは、日本がアメリカに対して貿易で勝つということである。日本が貿易でアメリカに圧勝した結果、何が起きたのか。日米貿易摩擦が起き、プラザ合意における円高誘導によっての輸出弱体化、日米構造協議ではインフレ期にも関わらず内需拡大を要求され、10年間で総額430兆円という巨額の公共投資基本計画の策定など、日本の制度や構造を変えることによって自分達が優位に立とうとする行動をやってのけた。要するに、日本と貿易においてガチンコで戦っても勝てないので、ルールや制度を自分達の有利になるように変更することによって優位に立とうとしたのである。

相手国に安全保障を握られているという弱い立場では、こういったちゃぶ台返しが平気で起こるのである。以上から、日本がTPP交渉に参加しても優位にはならないし、なったとしてもちゃぶ台返しされる。それだけの話である。


円安における輸出停滞に学ぶTPPのメリットのなさ

甘利大臣は円安にもかかわらず輸出が伸びない理由について次の3つを上げている

1,新興国の経済成長が失速した影響を受けて輸出が伸びていない
2,企業が利益確保を狙って海外での価格を下げずにいるため、輸出が増えない
3,生産拠点が海外に移転しているため、為替が円安になったからと言って輸出が増えないこと

問題なのは1と3である。

まず、1に関してだが、これは新興国に限らず、現在は世界的に需要不足の傾向が見られる。したがってTPPにおいても輸出が伸びるなどということは考えづらい。
3に関しても同様で、海外に生産拠点が移っているなら、TPPに入る意味は全くない。政府自身がTPPに入るメリットがないことを、事実上吐露してしまっている。

すでに日本の産業構造は輸出によって成長するような構造にはない。加えて、世界経済も需要不足が懸念されている。したがって、輸出主導での成長は困難である。外需がダメなら、内需で成長するしかない。こういうとすぐに人口減少ガーと叫ぶ人がいるが、一人当たりのGDPと人口に相関はない。したがって、人口が減っても一人当たりの所得は増やせるし、人口の減少以上に一人当たりのGDPが増えれば当然、需要も維持ないし拡大できるのだ。これは、あの池田信夫竹中平蔵ですら言っていることである。

これからの日本はまず一人当たりの所得やGDPに着目し、所得を上げ内需を拡大していくこと。面白味もなく地道な路線だが、これだけ世界経済が不安定化し不確実性が増している中では、着実な路線を選択するのが最良であると私は考える。