自分の損得のみで政治を語る人たち
もうこの手のポジショントークには本当に辟易としてる。国民年金と厚生年金で支給額が云々とかいう話*1 *2もあるが、それ以前に、社会のためとか国家全体のためとかではなく、ただ自分の損得のためだけに税制の話をする。これにウンザリしている。
東野圭吾氏が書くガリレオシリーズ「真夏の方程式」で湯川学は次にように述べている。
「儲かるか儲からないかだけで、科学者は自分の立場を変えたりしない。科学者がまず一番最初に考えるべきなのは、どの道が人類にとってより有益かということだ。有益だと判明すれば、たとえ自分には利益がなくても、その道を選ばなくてはならない」
これは政治や税制についても同じで、自分が儲かるか儲からないかだけで、政治や税制について考えてはならない。政治や税制について考えるべきことは、どの方法が社会にとってより有益なものかということだ。それが社会全体にとって有益だと判明すれば、たとえ自分に利益がなくとも、その方法を選ばなければならない。
分別のある大人は、自分にとって損か得かだけで政治について語ることは、非常に恥ずべき行為であると認識しているものだが、ネットにかぎらず、政官財にすらこの手の発言をする人間がいるのは、日本の政治的教養とでも言うべきか、そう言ったものが劣化していると言わざるを得ない。
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【ジュネーブ共同】各国の世論調査機関が加盟する「WIN―ギャラップ・インターナショナル」(本部スイス・チューリヒ)は18日、「自国のために戦う意思」があるかどうかについて、64カ国・地域で実施した世論調査の結果を発表、日本が11%で最も低かった。
欧米諸国が下位に並び、上位にはパキスタンなど情勢が不安定な国が目立った。
日本に次いで低かったのはオランダの15%で、日本と同じ第2次大戦敗戦国であるドイツが18%、ベルギー(19%)、イタリア(20%)が続いた。
現在は職業軍人の時代なので、基本的に一般人は後方支援となるだろうが、日本の場合、ヨーロッパ各国と違い、近隣に中国、北朝鮮、ロシアがあるという地政的リスクを抱えており、安全保障面で楽観できる状況にない。
現にロシアは59%、中国は71%と日本より大幅に高い。にも関わらず、日本のこの数字の低さというのは、日本人のお花畑度を如実に示している。
これは、教育による刷り込みが原因であろう。私自身もそうだが、とにかく戦争は良くないと教えられてきた。もちろん戦争は良いことではないが、他国から襲い掛かられた場合、自国や家族を守るために戦わざるを得ないだろう。こうした自衛権は国際法上も認められた権利である。
尖閣諸島の問題やサンゴ礁の問題など、無視できない現実的な問題がもうすでに起こっているのだから、真剣に国防・安全保障について考えないとまずいということを認識してほしいものである。
参考
軍隊のない国は、なぜ非武装でいられるのか? - リアリズムと防衛ブログ
親が高学歴なら子どもの成績も良いのは遺伝が要因?
まあ、要は「親の経済力が高いと子供の成績が良いのは遺伝が要因」という内容の記事。例えば、こういう主張がある。
格差を防ぐには、教育によって社会的流動性を高めることが重要だとされてきた。
しかし、社会的流動性が高いと思われてきたアメリカでは、低所得者層の大学進学率が10~20%であるのに対し、上位25%の子供の大学進学率は1970年以降、40%から80%に倍増した。
ハーバード大学の学生の親の平均年収 が45万ドルといった顕著な例があるように、金持ちの子が金持ちになる比率が極めて高いのだ。
出典:『日本人のためのピケティ入門』要約まとめ | bizpow(ビズポ)
こう言ったことの主な要因が遺伝ということだそうな。
では、社会的流動性が高いデンマークやスウェーデンの場合、一体どう説明するんだろうか。まさか、デンマーク人やスウェーデン人だけ、能力が遺伝しないとでも言うつもりか(笑)。
もし、主に遺伝によって能力の大小が決まるのであれば、あらゆる国の社会的流動性は低いはずである。しかし、実際には国によって社会的流動性には差がある。
所得格差と社会的流動性
もう何回も書いているが、極端な所得格差は社会的流動性を阻害する。それを示すグラフが下記のグレート・ギャツビー・カーブである。
また、ノッティンガム大学名誉教授のリチャード・ウィルキンソンによれば、「アメリカン・ドリームを叶えたいなら デンマークに行くべき」だという(笑)*1。すなわち、アメリカでは、極端な所得格差が社会的流動性を阻害し、アメリカン・ドリームは起きづらい。逆に、格差の小さいデンマークは社会的流動性が高いため、アメリカン・ドリームを起こしやすい。
似たようなことは、CNN.co.jp : アメリカンドリームの実現、日本よりも難しい? 国際調査でも言われている。
別に能力主義を否定しようというわけではない。公正な競争の結果としての格差であれば、人の能力には個人差があるので、ある程度は仕方がない部分もある。
ただし、極端な所得格差によって公平な競争環境が阻害されているというのであれば話は別だ。産まれてくる子供は家庭環境を選ぶことはできない。したがって、たとえ貧しい家庭に生まれたとしても、能力や努力によって高学歴、高収入になれる社会的流動性が高い社会こそが、望ましい社会ではないだろうか。