スティグリッツの発言について考察

NHK BIZ PLUS:ジョセフ・スティグリッツ・コロンビア大学教授へのインタビュー(10/30/2013) – 道草

 

スティグリッツのインタビューが翻訳されていたのでその発言内容について考察。

 

■2001年のノーベル経済学賞は、ジョージ・アケロフさんも共同受賞されました。アケロフさんの妻がイエレン次期FRB議長ですが、イエレンさんも直接ご存知では?

よく知っています。彼女は私の教え子です。

 イエレンってスティグリッツの弟子だったのか

 

量的緩和政策について

私自身の感覚としては、金融政策は限定的な役割で、本当に必要なのは財政政策です。まさにその場でワシントンの停滞が起こっていることが非常に逆効果になっている。

 

量的緩和はすごく大きな効果はなかった。緩和縮小もすごく大きな効果はありそうにない。それがすごく大きな効果を生まなかった理由の一つは、まだ金融機関 を完全に修理できていないので、蛇口をひねっても給水が上手く行かないからです。マネーはアメリカで必要とされる所までたどり着かない。

 まあ、金を中央銀行の当座預金にブタ積むだけじゃ実体経済は良くなりませんよねー。

 

トリクルダウンについて

真の問題は、消費税が増税される際の不確実性です。私は、常に、日本は炭素税を導入したほうがいいと考えてきました。消費増税の影響を相殺するために法人税を下げるという議論があります。それは間違いだと思う。法人税を下げると、投資が増えるという証拠はないし、それはトップ層の人々が常に提唱する典型的 なトリクルダウン経済学です。

 

私が主張している政策は、法人税を上げて、投資をする人に対する税率を下げることです。そうすれば、投資のインセンティブを生み出すことが出来る。経済システムからただお金を持ち出すだけなら税金を課しますよ、と。でも、お金を経済システムに返すなら、税金を低くしてやるんです。それが私の推薦する政策です。

 これはその通りなんだけど、格差社会になると、富裕層はその立場を維持ないし拡大するために、政治に手を出してくるため中々難しい。実際、日本でも産業競争力会議や、経済財政諮問会議にいる民間議員なる連中が、移民の導入や配偶者控除の見直しなどなど、労働者にとって不利になる政策が検討されている。

 

■大企業がまず潤えば、賃金の上昇などを通じて社会全体に効果が波及するのでは?

それは機能しません。それが機能しないのには多くの理由がある。トップ層の人々にお金を投げ入れる時の問題の一つが、彼らは大金持ちなので、支出をこれ以上増やさないし、増やせないということです。支出を増やすにしても、彼らは絵画収集のようなことに支出する。ゴッホの絵にもっとお金が使われても、 ゴッホはもう絵を描きません。彼は100年以上前に死んでいますから!! だから、新たな雇用は全く生み出せないんです。問題は、我々が欲しているのは今 日の普通の人々が生産している商品を人々が購入することです。それこそが「トリクルダウン経済学」が機能しない理由です。

 トリクルダウン理論が機能しないことは、アメリカ自身が証明している。アメリカの労働分配率は91年以降大きく落ち込んでいる。*1

 

構造改革について

 彼(安部総理)がポジティブな構造改革案を出せればいいのですが、しばしば構造改革案は規制や社会的保護の廃止を意味するものとされ、そうなると下層の人々を守るものがなくなります。私が望んでいるのはポジティブな構造改革です。

おそらくポジティブな構造改革とは、需要を増やすような構造に改革すべきってことでしょうな。しかし、安部総理は配偶者控除の見直しや労働の規制を岩盤規制と名付け、自らがドリルとなって云々言ってますが、終わってますな。

 

日本経済を転換して行くのに役立つ政策、もっと女性の労働力参加を増やすのに役立つ政策、経済のグローバル化に役立つ政策、こういった政策を首相に採用してほしい。

経済のグローバル化スティグリッツは反対してるんじゃなかったでしたっけ?その証拠に彼は「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」という本を出してますし、本当にそう言ったのかな?ついでに女性の労働力の参加は、賃金低下圧力がかかり需要が縮小するため駄目ですよ。デフレを脱却してからやればいいだけの話。

 

・市場原理について

 彼ら(主流派経済学者)は、市場が常に完全で、常に機能し、安定したものだと信じていて、アラン・グリーンスパンのような人に規制をするな、何もするなと説き伏せました。その結果がこの災厄です。

 その結果、日本も20年近くGDPが伸び悩んでいます。

 

・日本における大企業を政治的にどう考えるか

CEOが税金を下げろというのはよく理解できます。彼らが脅しのために、税金を下げないんだったら、他の場所に移るぞ、というのはよく理解できます。企業 が言いたいのは、税金をかけるんだったら、1,2%の税率引き下げなどいらない、日本以外の別の場所で仕事をするから、ということなんでしょうが、私なら どうぞと言います。日本には良質な労働環境があって、OECDの中で最も教育水準の高い人口がいます。それは価値があるものではないですか? 何の価値もないんですか? それらのことにはお金を払う必要がある。組織的で、文明的な社会の代価を払わなければならない。

私もどうぞと言いますね。その根拠は日本の外需依存度は15%程度と低く、経済は内需に依存しているから。また、外需依存型国家は、自らの政策で経済をコントロールできないため、世界経済に大きく左右されやすいという欠点を持つ。世界的な金融危機アジア通貨危機リーマン・ショックの存在を考えた時、外需依存型の国家は極めて脆弱であり、内需主導で成長したほうが安定した国家運営が可能になるだろう。

 

 アメリカで、私が見るところ最悪のただ乗り企業であるアップルは税金から逃れるために策略を使い、どこの州にも属さない場所に住所のある企業を作ることによって全く税金を払っていない。彼らはアメリカ政府が出資したインターネットという便益や、アメリカの教養の高い人々や、アメリカのインフラを使って利益を上げているのに貢献する気はないんです。私ならそのような不道徳な人々にこう言います。ここから出て行ってくれ、我々は社会に貢献していく意志があって、建設的に社会を活用していく別の人を見つけるから。

国家が国防を担い、治安を守り、インフラを維持・確保しているからこそ企業活動や経済活動は可能となる。企業は当然その対価を支払わねばならず、それができない企業は社会に貢献しているとは言えないだろう。