格差が成長を阻害する
記事によると国際通貨基金(IMF)が2月に発表した報告書で格差や所得分配について次のように結論付けたという。
(2)格差が縮小するとより高速で永続的な成長が促される
(3)所得再配分は、行き過ぎないかぎり経済成長には無害である
また英フィナンシャル・タイムズ紙では次にように述べている
各国のデータに基づき、所得格差や再配分が1人当たりの実質所得の伸びに及ぼす影響を調べると、格差が成長を阻害していることは明らかだった。再配分の直接的な効果は取るに足りないが、格差縮小による間接的影響が成長を後押ししていた。さらに、すでに高水準の再配分をさらに増大させることは成長を妨げることも判明した。行き過ぎた政策でなければ、所得再配分が成長を妨げることはないということだ。
こうした調査結果は予想外かもしれない。格差が成長を妨げるばかりか、格差を是正する努力が成長に害を及ぼすこともない。従って、所得再配分と経済成長のトレードオフ(相殺効果)を懸念する必要はないことが示唆される。
またこれは日ごろの観察結果とも矛盾しない。高度に再配分が進む北欧諸国では、そうでない南欧よりも経済が好調であり、金融危機の影響も少なかった。また、日本、韓国など格差の少ない東アジア諸国は、そうでない中南米諸国よりも第2次世界大戦後に高い経済成長を遂げた。
似たようなことは、アメリカの政治経済学者で格差社会の到来を予言した、ロバート・B・ライシュも言っている。
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・中間層が十分な購買力を持たない限り、確固たる経済回復は望めず、経済は長期にわたって停滞する。
・所得が比較的少数の人々に集中すると、財とサービスに対する全体的な需要は縮小する。
・根本的問題は、アメリカ人がもはや、アメリカ経済が生産できるありとあらゆるものに見合う購買力を有していないことにある。その理由は、国民所得が上位の富裕層に向かう割合が増えているからである。
・国家の所得や富の大部分を獲得するごく少数の人々と、減っていく残りの富を分け合うその他大勢とが分断されているような国は、決して立ち行かない。経済活動の真ん中で「基本的な取引」が壊れたままでは米国の成功はない。
さて、格差が経済成長を阻害し、中間層が十分な購買力を持たない限り、確固たる経済回復は望めないのであれば、格差を縮小し、実質賃金が上がるような政策を打っていくべきだが、現在安倍政権はこれと全く逆のことをやってしまっている。
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その他、消費税増税、配偶者控除の見直し、経済特区、解雇規制緩和、混合診療など上げれば枚挙にいとまがない。安部総理は格差を縮小する気など一切なく、むしろ企業、特にグローバル企業を優遇している。それはおそらくグローバル競争力の強化が国益につながると考えているからだろう。
しかし、スティグリッツも言っていたようにそのようなトリクルダウン理論的な発想は間違っている。またライシュやIMFが言うとおり、格差は不平等というだけでなく、経済効率が悪く、成長を阻害し、需要を縮小させる。当然、そうなれば安部総理が掲げる、デフレからの脱却を困難なものにする。
民主主義国家でこのようなことをすれば、当然政権は支持を失い、政治が不安定化し、また自民党は下野するかもしれないリスクもある。別に自民党なんぞ下野しようがどうでも良いが、自分が政権を失うリスクまで賭けて、一体安部総理は何のためにこんなことをしているのかさっぱり理解できない。