格差解消のために富裕層に増税すると金持ちは逃げる、らしい


格差解消のために富裕層に増税すると金持ちは逃げる - きりんの自由研究

 

このエントリー、非常に読みやすくてまとまってるのだが、細かいところで、いろいろ気に喰わない点が。

例えば、「税の累進性の上昇は経済効率性の阻害要因である」と言ってwikiにあるアガサ・クリスティーの例を用いているのだが、これだけだと詭弁のガイドラインの「ごくまれな反例を取り上げる」に該当する。

もうここで何回も取り上げたが、日本の高度成長や資本主義の黄金時代と言われる経済成長は、1945年から1975年の各国の所得の最高税率が、現在よりも高い時に起こっている。

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出典:ピケティ『21世紀の資本』オンラインページ

まあ、もちろん経済効率性は税制だけで決まるわけではないが、少なくとも事実としてこういうことがあるのは確かだ。

それと企業の場合、法人税率だけで移転先を決めるわけではない。内閣府がまとめた2013年度の企業行動に関するアンケート調査によると、生産拠点を海外に置く理由は「現地やその周辺の需要が旺盛」が50.8%とトップ。2位は「労働コストが安い」(19.1%)、3位が「現地の顧客ニーズに対応しやすい」(14.4%)だった。*1

フランスの最高税率の話にもいろいろとおかしな点が。

1つ目にフランスの場合、急進的に税率を高めすぎた。私は、累進課税の強化に賛成の立場だが、40%から75%にすると言われたらまず反対する。こんな急進的なことをすれば、反発を招くからだ。現にそういったことが起こってる。

政治で何かを変える場合、話し合いの場を設け反対派と話し合い、理解を求める努力などするのに加え、急進的ではなく漸進的に変えなければならない。急進的な変更をしてそれがもし間違いだったり、反発を招けば、取り返しの付かないことになる場合があるからだ。

2つ目にフランスの場合、文中にあるベルギーなど公用語にフランス語が含まれる国が周りにあり、またヨーロッパ圏は、ある程度のレベルで文化や慣習を共有している。日本人がシンガポールなどに移転するのとは少しハードルが異なる。

スウェーデンデンマーク云々も、まあ良いんだけど、じゃあ、スウェーデンデンマークの一般の労働者が、他国より税率が重いからやる気が無かったり、フランスのように反発を招いてたりするのかねという。北欧の場合、税率が高くてもその分、福祉が充実しているし、国民的な理解を得ているため、フランスのようなことは起こらない。

日本も税率が高い分、治安が良い、インフラが整備されている、世界第三位のGDPの規模でその内、内需が8割ほどという市場としての魅力など良い面もあるわけで、要は高い税率というデメリットを上回るメリットがあれば良いのではないかと。

まあ、ただそれでも出て行く人は出て行くでしょう。日本の富裕層も毎年かなりの数がシンガポールに居を移しているらしいとのことですしね。実際どのくらい移しているのかよく知りませんが。まあ、出ていく自由はあるので、出て行きたい人が出て行くのはしかたがないでしょう。

個人的には、日本の教育を受け、日本のインフラを使い、日本の消費者によって成功したにも関わらず、それを税として還元するのが嫌だという人間には、むしろ出て行ってもらったほうが良いではないかと思います。

でも、そういう人ってなぜか大体、日本にいますけどね。竹中平蔵とか(笑)。